あなたの街を音楽にします!

少し間が空いてしまいましたが、改めまして遠軽・札幌公演、多数のご来場ありがとうございました!
なんども書いてるけど、この北海道ツアーが実現したのは遠軽町が「街の文化事業」として呼んでくださったことがそもそものはじまり。
調べてみると日本各地でこういった「文化事業」として、いろんな楽団が街を訪れているみたいですね。
ただ(一概には言えませんが)ほとんどが「みんなの良く知ってる曲を一流の演奏家が聴かせる」といった趣向のコンサートが多いように見受けられます。
我々のようなオリジナル楽曲を演奏する、いわゆる「バンド」みたいなスタイルは「まれ」のように感じます。
そんな我々を呼んでくださったなんて〜!
これはスゴイうれしい事だけど、別に「それでいいんじゃない?」とも思うのです。
と、いうのも以前から普段どちらかというと「音楽に馴染みが無い人」も含めたお客さんを対象にしたコンサートで「誰もが知ってる曲」っていうのをジャズだとかクラシック調にアレンジしたものをプログラムに組み込む楽団をよく見かけるのですが・・・あれ、必要ないと思うのです。
なんか、お客さんを見下してるようにさえ感じる。
お客さんが楽しんで、盛り上がるのって「曲を知ってるかどうか?」ってあんまり関係ないんじゃないかなぁ〜?
少なくともいろんな場所でいつも「誰も知らない曲」をやってる我々はそう感じてます。
ところで、今回の「文化事業」で何が良かった?って、モチロン数え切れないほどあるんですけど、中でも「地元中高生・一般楽団との共演」でした。
ある程度予想はしていたけど、総勢80名での大合奏は想像を絶する迫力!
共演はコンサートの中盤だったんだけど「それ以前」と「それ以降」の会場の空気の変わり方も良かった。
単に「ヨソから来た人の演奏を聴く」じゃなくて、自分の友人や家族がステージで一緒に演奏する姿を見るってのは、より親近感も生まれるんでしょう。
さらに!手前ミソではありますが、共演曲が良かった!!!いや、曲が「傑作」とか「名曲」って話じゃなくてですね。
ただ「いつものKABB!のレパートリーをみんなと一緒にやる」じゃなくて「この日の為にこの街をイメージして作った曲を、街のみんなと初演する」
で、その曲は街にプレゼントしちゃう、っての。
演奏するみんなにも特別な「なにか」が生まれたんじゃないかと思います。
これは、オリジナル曲をレパートリーにしてるKABB!ならではの「メリット」っちゅうか、最大の「強み」だと思います。
これはまたやってみたい!
というわけで、KABB!ではあなたの街を音楽にします!と大声で叫びたい!
これは、単純に「曲作りますよ」って意味でもあるし、街の人を巻き込んで「みんなで音楽やろう!」って意味もある。
もちろん、キチンと椅子に座って一流の演奏に耳を傾けるってのも素晴らしいとは思うけど、ともすると「ただ通り過ぎて行っただけ」なってしまわないとも言い切れない。
せっかく年に何回もない、多くの予算を使っての「文化事業」こういうのもたまにはどうです?
さぁ、全国の文化事業企画担当のみなさん!いかがですか?
(さらに、我々下見も含めて何日も滞在して大量に飲み食いしますんで経済効果もあります)
とりあえず、遠軽公演のプログラムに寄せた文章を載っけますんで「どれどれ?」とご覧下さい
(ちなみにこの文章の「前編」にあたるのがコチラです→2010-03-20 - KITO, Akira Brass band! 「ブラスブログ」

「かたい切符」
遠軽のみなさんへ〜
今回はお招きいただき、ありがとうございます。メンバーを代表して、心から御礼申し上げます。

僕は普段から音楽家というのは、他人より優れている腕前だとかそういった事を「披露」するものではないと思っています。もちろん芸術家然として部屋にこもって自問自答するものでもない。
結局、みなさんの前に出て行って「自分の気持ちを伝える」という事が大切なのかなぁ?と。ただ、それは一方的に「僕の事をわかって欲しい」という押し付けではなかなかウマくいかないもので、自分の気持ちを伝えるのに重要なのは「相手の気持ちを考える」なのかな、とも思っています。そういった、人との関係性の中から新たに見えてくる「自分のありかた」のようなもの。それを表現できたらいいなぁと思っています。
だから、特に最近は「つながり」や「自分の場所(ありかた)」みたいな事をテーマに曲を作っています。
今回、遠軽公演にあたって書き下ろした新曲「かたい切符」は3月にこの街を訪れて視察をした際に受けたイメージから発生したメロディです。東京から飛行機に乗って、紋別の飛行場に降りていく時に窓から見た広大な自然や北の海。空港から街までの車窓に飛び込んでくる広い空やどこまでも真っ直ぐな道路。夕方に散歩した街の何気ない日常。中学校の校舎から聴こえてくる吹奏楽の練習の音・・・それが「なんで、かたい切符なの?」ですよね。遠軽で受けた印象をただ曲にする事は簡単だったのです。でも「僕がどう思ったか?」という事に対してなかなかウマく表現する方法が見つからなくてちょっと苦労しました。
視察を終えて東京に戻って何日も経ったある日。別の事を考えながら電車に乗っていて、ふと思ったのです。
「今、この列車に乗ってる人の中で切符を持ってる人ってどれぐらいいるんだろう?」
今、都市部では「スイカ」や「パスモ」といった料金チャージのカードで電車に乗っている人がほとんどです。いちいち券売機に並ぶ必要もなく、自動改札にタッチするだけで乗れてしまう。切符を持ってる人だってペラペラな磁気切符で自動改札を通り抜けてきた人達です。
そこで、なんとなく「あ〜」と思ったのです。
3月に遠軽に来た時、駅のホームに行ってみました。時間が無かったので列車に乗ることはできなかったけど、切符を買って駅員さんにはんこを押してもらって・・・遠軽の人はそういうことを毎日してるんだな、と。
ちゃんとこれから「自分が行く場所」を調べて切符を買い、駅員さんの了解(?)を得て列車に乗る。
通学などで利用してる人は定期券を持ってるんだろうけど、それだって駅員さんに見せて、口には出さなくても「いってらっしゃい」「いってきます」ってやりとりがある。
プリペイドカードや電子マネー。食券を自販機で買って店員さんと何の会話もなく食事ができるファストフードチェーンが「あたりまえ」になった街に住んでる僕にとって、遠軽で手に入れた「かたい切符」は宝物のように思えてきたのです。
見てきた景色ももちろんなんだけど、今自分が住んでる場所と対比する事で遠軽という「場所」や住んでいる人の「つながり」を意識できた。それが「かたい切符」だったのです。

これは、ここに書くことかどうか迷ったし、すでにご存知の方も多いのかも知れませんが。
今回、我々がこの遠軽に来る事になった「そもそものキッカケ」は街の「いち青年」がバンドのDVDを見た事でした。そこから街に掛け合って文化事業にまで持って行った。その「恐れ入る行動力」の源は「街の人達にこのバンドを見せたい!」という思い。
これが、たとえば東京に住んでる「いち青年」であれば、気に入ったバンドを見つけたとしても、せいぜい「見にいきたい」でしょう。ほとんどは「そのうち見にいこう」で、実際行動に移す人は少ない。
「見せたい!」という発想と行動力が生まれる街。
それは、日常が「つながり」と密接である、この「場所」ならではなんだと思います。

そして「そんな気持ちに応えたいな」と思って作った曲が「かたい切符」です。

「切符」は公共の機関を利用する場合を除いて「約束」や「握手」で代用されることもあります。
そんな、ちょっとロマンチックな「深読み」も良いかもしれません。

それから、曲の方も2度とKABB!で演奏する事はない(と思いますので)今回聴き逃しちゃったKABB!ファンの人もせっかくなんでデモ音源ですがどうぞー!

「かたい切符」 2010 KITO,Akira All Rights Reserved


鬼頭哲http://kito-akira.com