「怪しい眼鏡をかけ髪が長くいかにもミュージシャン風の男性」の正体は
「君は、何をしている人なの?」
私は、返事に詰まりました。
だって、「見りゃわかるでしょう、トロンボーンの演奏してたのよ」とは言えなかったのです。
なにせ、いかにも怪しげなこの男に、びびっていて。
この人はきっと、私の演奏がつまらなくて気にくわなくて、怒っているんだろうと思いました。
つまり、「お前みたいなシロートの演奏を聴きに来たんじゃない!チャージ返せ!」って言っているんだと思ったんです。
私の記憶が確かなのはここまで。
あとは気が動転して、何を話したのか、正確には覚えていません。
だた、覚えているのは、この謎の男はサックスをやっている人だということ、今度バンドをやろうと思うから連絡先を教えてほしいと言われたこと、そしてその後、他のメンバー(ドラム、チューバ)にも声をかけていったという事だけです。
つまり、怒って私にいちゃもんをつけてきたわけではない、ということだったのです。
私は謎のサックス男に携帯電話の番号を伝え、その場をやり過ごすことができました。
ところが、何日たっても、何ヶ月たっても、連絡はありませんでした。
あれは一体なんだったのか?
しかし、連絡がこない原因は私にあったのです。
さて、続きは、また後日。
(小島 弓枝)