「ミス早起き!」が見た風景 〜「散歩と冒険」が始まるまで〜


午前7時、いつものようにローカルのテレビ番組で聞きなれた名古屋弁を耳にしながら出かける支度をする。午前8時半、いつもの時間に家を出て、地下鉄の駅へ向かう。左肩に赤いワンピースの入った大きな紙袋、右手には黒くて重いハードケース、左手には真っ赤な帽子と家にあるメガネ全部が入った紙袋、楽譜と譜面台の入った鞄。大荷物をかかえて、やっとのことで地下鉄を乗りついでたどり着いた先は、外壁一面が緑色の蔦で覆われた建物。  
建物の裏口から内部へ入ろうと、秋晴れの空を見上げながらのんびりと駐車場を歩いていると、後ろから車が近づいてきた。乗っていたのは、バンドリーダーの鬼頭さんや企画・プロデュースの浅利さん。
そう、今日は10月23日、鬼頭哲ブラスバンドのホールコンサート「散歩と冒険」の当日なのだ。

いつものように目が覚めてしまったので、いつものように出かけてきてしまった。出かけた先は、朝9時から仕込を始めているというコンサート会場である千種文化小劇場。コンサート開演の、なんと9時間以上も前から「散歩と冒険」は既に始まっていたのだ。

会場内に入ると、既にスタッフによる仕込が始まっていた。まだ誰もいない、がらんとした楽屋へ荷物を置いて、ステージを見に行く。


あそこからはステージや客席がどんな景色で見えているのだろうか、などと思いながら、頭の上でおこなわれる照明の仕込みの様子を見上げていたら、首が痛くなってきた。
舞台正面後ろには、大きなスクリーンがある。そこに映し出される、どこかで見たことのあるような日本の街の風景。街中の川。見たことも無い外国の風景。駅と列車。飛行機。子供達の笑顔。





ロビーへ出ると受付の準備が始まっていた。出入り口を眺める。さっきまで暗い会場内にいたので、外からの光がまぶしい。今日はどれぐらいの人がここから「散歩と冒険」にやってくるのだろう。プログラムを手にとって読むと、さっき見た大型スクリーンに映し出された景色が思い浮んだ。



会場内へ戻るとステージ後方、パーカッションの立ち位置の舞台が30センチほど上がっていた。舞台が上がる瞬間が見たいと思っていたのに、見逃した!椅子が並べられて、ステージが出来上がる。舞台上空では、照明作業が続いているので、下にいる人たちもオレンジ色のかわいいヘルメットをかぶる。全身オレンジ人間の奇妙な撮影会が始まった。




受付嬢と共に、近くのカフェへ早めのランチに出かける。ここでのんびりしすぎたらしい。戻った頃には、バンドメンバーのほとんどが会場入りする時間になっていた。

サウンドチェック終了後、本番用の衣装に着替え、ふと気がつくと、みんなメイクもバッチリ。全員での集合写真の撮影。今朝の大荷物はここで活躍することになる。この集合写真は必見!





そして、まもなく鬼頭哲ブラスバンド ホールコンサート「散歩と冒険」が始まる時間。


ライブの当日は、大抵が昼過ぎとか夕方に会場に着けばよいので、もっとゆっくり寝ていればよいところなのだが、必ずと言っていいほど早起きになる「ミス早起き」なのだ。普段と同じ時間に起きて、同じ時間に家を出て、同じように空を見上げる。いつもと同じ空が、そこにはある。春の心地よい風が吹く朝、夏の蒸し暑い朝、秋の快晴の朝、冬の空気がピーンと張り詰めた朝。
毎朝、空を見ながら鼻唄を歌い、散歩と冒険が始まる。


次の機会は12月。 みなさん、冬支度を整えて、出発ですよ。
(小島 弓枝)